2014年6月22日日曜日

理想的な脳波、それは「今」




「パブロフの犬」という現象は、音を鳴らしてエサを与えるということを繰り返していると、音を鳴らしただけで犬がヨダレを垂らすというものだ。

これは専門的に「レスポンデント条件づけ」と呼ばれる。



一方、似たような現象に「オペラント条件づけ」というものがある。

これは、何か行動をした時に、その結果が良ければ、その行動をドンドン繰り返すようになるというもの。たとえば人間は、褒められるとドンドンその行動を繰り返すようになる。






そのオペラント条件づけを利用するのが「ニューロ・フィードバック」という訓練。

たとえば緊張すると手に汗をかく。テトリスのゲームなどでもそうだ。そこでゲーム中、手の汗量を測りながら、ある一定以上の発汗になると音が鳴るシステムを使い、音が鳴らないようにゲームを続けて行く。

すると、だんだん音が鳴らなくなってくる。自分の緊張具合がフィードバックとして自覚されることで、平常心を保ちやすくなるのである。



たとえばパックマンのゲーム。脳波を測定しながら、理想的な脳波のときにだけパックマンが動く。逆に、望ましくない脳波のときは止まってしまう。

これも続けるうちに、パックマンはだんだんと止まらなくなる。ちなみに被験者はとくに何も意識しなくともそうなっていく。自然に気持ちの落ち着くほうへと向かっていく。



これがニューロ・フィードバック。

ニューロは「神経」を意味し、その状態を自分自身にフィードバックさせることで、パフォーマンスの向上を図るのである。

たとえば、イタリアのサッカークラブ、ACミラン(本田圭佑所属)などは、こうしたトレーニングを行っているという。また、オーストラリアやカナダ、アメリカなどもオリンピック選手の育成に役立てているという。






ところで、理想的な脳とは?

「簡単に言ってしまえば、『現在に一番集中しているとき』ですね」

小沢隆(空手禅道会)氏は言う。

「負のファクターがあると、何らかのきっかけで意識が未来へ、結果のほうへ飛んだときに不安定な状態になります」



たとえば、勝ちを意識するあまり、未来のことを考えて不安になることがある。これを「予期不安」という。

「未来や過去に意識がいくと、扁桃体が興奮するんですね。負けたらどうしようとか、勝ちを急ぐとか。単純に『今に集中する』メンタリティができていればいいんですが」






集中しているとき、脳の前頭葉にベータ波という脳波がでる。

逆にリラックスしているときには、後頭葉にアルファ波がでる。

「基本的に、集中している時はベータ波がでるんですが、でも、それがあまり強すぎると周りが見えなくなってしまう。だから、ある程度リラックスしている必要もあって、そのバランスが大事なんです」

その理想のバランスに関しては、個性(人種・性別・年齢)によって違ってくるという。だが、いわゆる「平常心で恐怖心がなく、かつ集中している」という状態は、だいたい決まっているという。



たとえばヨガでは、苦しいポーズをとっている時に「しんどいなぁ」と思ったら、それを「放っておく」のだそうだ。それがストレス下におけるヨガの「今に集中する方法」だという。

その科学的な手法が「ニューロ・フィードバック」ということだ。






(了)













ソース:DVD付き 月刊 秘伝 2014年 05月号 [雑誌]
精神と身体への新たな試み「ニューロ・フィードバック」



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