2014年6月26日木曜日

帰ってきた「シンクロの母」




「あなたの脚、短いね」

シンクロナイズド・スイミング

そのコーチはずばりと欠点を指摘した。

「脚が短いのはかまへん。短く見えることがダメ。筋を目いっぱい伸ばして、人の目をひきつけるようにすれば、長く見えるのと違う?」



歯に衣着せぬ、このコーチ

井村雅代(いむら・まさよ)、63歳

かつて日本代表に、ロス五輪(1984)からアテネ五輪(2004)まで6大会連続でメダルを獲得させた名将である。



1996年のアトランタ五輪、日本のシンクロナイズド・スイミングは、チームで銅メダル。

しかし井村コーチは激怒した。

「あんたらにメダルを持って帰る資格はない! それまでの過程が悪すぎる!」



当時、チームの中心選手であった立花美哉は、その時のことをこう振り返る。

「あの時から私たちの意識が変わったんです。それがシドニーでの銀メダルにつながりました」

井村コーチのぶちまけた劇薬は、日本を一つ上のレベルへと導いた。









アテネ五輪が終わると、井村コーチは日本代表を離れた。

それ以後は中国代表コーチに就き、北京五輪(2008)とロンドン五輪(2012)で中国にメダルをもたらした。



一方、井村コーチのいなくなった日本。

先のロンドン五輪では惨敗。シンクロが1984年に正式種目として採用されて以来、日本の連続メダル獲得記録は途絶えた。









そして今季(2014)

「シンクロの母」井村コーチは、日本に帰ってきた。10年ぶりに。



本音をストレートにぶつけ、相手の急所を突く井村コーチの言葉。

彼女自身は「すべて、本当のことを言っているだけ」とサラリ。



不振にあえぐ日本のシンクロに対しては、「選手たちに勝つ喜びを教えてあげないといけない」と語る。

「この苦しみを乗りこえたら、強い日本が戻ってくる。選手にはそう話しています」



「世の中、どうにもならないことなんてない。必ずどうにかなる。それを考えるのが人やと思うし、コーチの役割ですよ」













(了)






ソース:Number (ナンバー) ギリシャ戦速報 2014年 6/30号 [雑誌]
名将の言葉「井村雅代」



関連記事:

「世界と戦うチーム」東洋大水泳部。平井伯昌の下で

新怪物「荻野公介」の人間らしさ [水泳]

人のため、自分のために。松田丈志(競泳)




0 件のコメント:

コメントを投稿