2014年6月13日金曜日

「最強の盾」チアゴ・シウバ、「最強の矛」ネイマール [ブラジル]




世界最高のCB(センターバック)

ブラジルの「チアゴ・シウバ」は、そう称される。

所属するパリSG(サンジェルマン)において、年棒1,200万ユーロ(約16億8,000万円)というCB世界最高額が、その証左でもある。



彼がパリSGに移籍したとき、メディアは盛んにバッシングした。

「金の亡者」

それは、チアゴ・シウバが少年からずっと憧れていたバロセロナFCのオファーを蹴ったからだった。



批判に対して、チアゴ・シウバは堂々と言った。

「ときには夢に背を向けなければならない。人生は難しい決断の連続でできている。なりより僕は家族を養わなければならない」

カタール・マネーによってチアゴを獲得したパリSGは、フランスリーグ2連覇を果たした(もちろんイブラヒモビッチの加入もあった)。






ザゲイロ(ブラジルでCBを意味する)

チアゴ・シウバ

彼は「美しくボールを奪う」。身長183cmは世界のCBではそれほど大きくはない。だが、その華麗な跳躍は彼をして「空中戦は得意」と言わしめる。



「ああいうCB(センターバック)がいるから、彼らはディフェンス・ラインを押し上げられるんだ」

ブラジルと対戦した長谷部誠は、そう感嘆する。

伝統的にブラジル代表は「最強の矛」には恵まれていた。だが「最強の盾」となるとどうだったか…。ところが今回の自国W杯、チアゴ・シウバがその最強の盾となりブラジル陣内を固める。

「チアゴ・シウバがいるから、ブラジルは今回、優勝候補の筆頭なのだ」とまで言われている。






チアゴ・シウバの口数は多くない。いたって真面目なキャプテンだ。

一方、代表でCBコンビを組むダビド・ルイスは陽気で口が減らない。

チアゴは言う、「僕は朝の練習のときなど、顔をしかめてやっていることもある。神経質になって話かけてもらいたくない時もある。でもダビド・ルイスはまったく違う。朝起きた瞬間から、彼は冗談ばかり言っているんだ」



国民もそうだ。陽気で楽天的であるように見える。

チアゴは言う、「確かにブラジル人を見ていると、深刻な問題などないように、つねに笑って人生を楽しんでいる。ブラジル人は心のどこかに必ず喜びを隠しもっているんだ。喜びがあればチャンスも生まれる」



その象徴がエース・ネイマールだ。彼は喜びを象徴するようなプレー、いわゆるフッチボール・アルチ(芸術的フットボール)を披露する。

チアゴは言う、「ネイマールはどんな時でもブレーする喜びにあふれている。ダビド・ルイスにしても悲しそうにしているのを見たことがない。今の代表選手はみんな、そういう同じ気持ちでプレーしているんだ。いずれにせよ、セレソン(ブラジル代表)の雰囲気はとてもいい」



キャプテンとして、チアゴ・シウバの責任は重い。本国開催のW杯だ。

「ブラジルのサッカーは決して世界最高というわけじゃない。それでも僕は勝利のシナリオしか思い描いていない。今は勝たねばならない時なんだ。今は負ける時ではないと思う。僕らの国ではサッカーはほとんど全てと言っていい。国全体を瞬間的に変えることのできる唯一のスポーツがサッカーなんだ」

「ネイマールのために走らねばならないのであれば僕はそうする。彼のために死ななければならないのであれば躊躇わずに死ねるだろう。なぜなら、彼こそがどんな時でも僕らに勝利をもたらしてくれる存在であることを、僕らはよく分かっているからだ」








チアゴ全幅の信頼、そしてブラジル全国民の期待

ネイマールはW杯初戦からそれに見事応えた。



開始早々、まさかのオウンゴールで先制されたクロアチア戦。

いきなり死地に立たされたブラジル。その後のネイマールのプレーには鬼気迫るものがあった。あきらかに間に合わないボールにも、少林寺ばりの飛び蹴りで追いすがった。クロアチアの堅い守備を破ろうと必死だった。仲間のミスは俺が取り返すとばかりに、ブラジルの至宝は泥臭く走り回った。

そして前半29分、ネイマールはついに現状を打開した。やや遠い位置からディフェンダーの股下を通してゴール右隅ぎりぎり、ポストに当ててクロアチアのゴールをかち割った。







後半26分。逆転ゴールもネイマールだった。首尾よくPKを獲得したブラジル。キッカーは当然のごとくネイマール。恐ろしく重圧のかかるその場面、ネイマールの蹴ったボールはキーパーに完全に読まれた、にも関わらず、その両手を弾き飛ばした。

まるで「ブラジルの期待」がそうさせたかのように。


















(了)






ソース:Number Web
チアゴ・シウバ「世界のCB頂点、モンスター。故郷でのW杯」



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